症例報告
特異な発育形式をとった“食道のいわゆる癌肉腫”の1例
北薗 正樹, 島田 麻里緒, 夏越 祥次, 池田 直徳, 馬場 政道, 福元 俊孝, 愛甲 孝
鹿児島大学医学部第1外科
食道の癌肉腫は,いわゆる癌肉腫・偽肉腫・真性癌肉腫の3つに分けられている.今回,我々は食道―胃接合部より発生した,食道のいわゆる癌肉腫を経験したので報告する.腫瘍は食道―胃接合部に茎を有し,胃内に垂れ下がる様に発育していた.また,中央にて2つに分葉するという,特異な発育形式をとっていた.いわゆる癌肉腫の病理学的鑑別点として,肉腫様部分に上皮性の特徴が存在するか否かがポイントとなる.当症例では,HE染色にて茎部の扁平上皮癌とそれに続く肉腫様細胞との間に移行像を認め,いわゆる癌肉腫と診断した.しかし,免疫染色では肉腫様部分は上皮性成分由来のマーカーであるケラチン,EMAには陰性で,非上皮性細胞成分由来のマーカーであるvimentinには陽性であった.この様にHE染色所見と免疫組織化学的所見との間に解離がみられることは諸家の文献にも見い出され,今後の検討課題と思われた.
索引用語
so-called carcinosarcoma
日消外会誌 30: 1922-1926, 1997
別刷請求先
北薗 正樹 〒980 鹿児島市桜ケ丘8-35-1 鹿児島大学医学部第1外科
受理年月日
1997年3月19日
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