原著
Carcinoembryonic antigen可溶化による感度増強法を応用した腹腔内洗浄細胞診キット化の試み
須原 貴志, 辻 恭嗣, 加藤 元久, 国枝 克行, 梅本 敬夫, 宮 喜一, 佐治 重豊
岐阜大学医学部第2外科
胃癌腹膜播種性転移の簡便な診断法として,CEA抗原が細胞膜にphosphatidylinositol anchorで疎水結合し,これがphosphatidylinositol phospholipase C(PIPLC)で切断され可溶化する現象を応用した診断用キットを開発・試作した.方法:腹腔洗浄液をGlass Microfibre Filter(GMF)で可及的濾過し,細胞沈渣を抗CEA抗体含有固相化フィルム上に接触させ,0.05単位のPIPLCを添加し60分間反応後発色させ,非添加例との間で比較し色調差を認めた例を陽性と判断した(PIPLC-kit法).対象は胃癌63例で開腹時に細胞診を施行しPIPLC-kit法の有用性を評価した.結果:細胞診陽性の16例はPIPLC-kit法でもすべて陽性であった.陰性47例中PIPLC-kit法で5例が陽性と判定された.肉眼的腹膜播種陰性の52例中細胞診で5例,PIPLC-kit法で10例が陽性であった.以上の結果,PIPLC-kitは腹膜播種性転移の簡便な早期診断法として有用である可能性が示唆された.
索引用語
peritoneal dissemination, irrigation cytology, CEA, phosphatidylinositol phospholipase C, assay system
日消外会誌 31: 2303-2311, 1998
別刷請求先
須原 貴志 〒500-8705 岐阜市司町40 岐阜大学医学部第2外科
受理年月日
1998年9月16日
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