症例報告
胃転移を来した悪性神経鞘腫の1例
重盛 千香, 池田 哲也, 山際 裕史*, 鈴木 宏志**
日下病院外科, 三重大学中央検査部*, 同 第2外科**
左上肢原発の悪性神経鞘腫が胃に転移した症例を報告する.症例は54歳の女性で,主訴は貧血である.10年前,左前腕背側の腫瘤に始まる悪性神経鞘腫で,左上肢を切断されるも,再発,転移を来していた.昨年,Hb 4.5g/dlと貧血を認め,精査にて胃の巨大粘膜下腫瘤を認めた.粘膜生検標本は腺管構造を欠くも,低分化な腫瘍細胞からなっていた.上肢悪性神経鞘腫患者に発症した胃癌と診断し手術を施行した.摘出標本は胃体下部から幽門部の潰瘍を伴う巨大な粘膜下腫瘍で,組織所見は,悪性神経鞘腫の所見を呈し,S-100蛋白陰性も,NSE陽性,デスミン,ビメンチン,アクチン,ミオシン抗体は陰性であった.この結果は上肢の原発巣と一致し,悪性神経鞘腫の胃転移と診断した. 悪性神経鞘腫は軟部組織腫瘍の10%を占めるが,胃に転移した症例の報告はなく,極めてまれな症例であると思われた.
索引用語
malignant schwannoma, gastric metastasis
日消外会誌 32: 2000-2004, 1999
別刷請求先
重盛 千香 〒514-8507 津市江戸橋2-174 三重大学第2外科
受理年月日
1999年2月24日
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