症例報告
胃空腸吻合術後TS-1が著効し腫瘍が消失した進行胃癌の1例
廣吉 基己, 荻野 和功, 黒田 大介, 守友 仁志, 藤田 博文, 小川 博*
聖隷三方原病院外科, 同 病理*
症例は64歳の男性.幽門狭窄を伴う進行胃癌に対し開腹手術を行ったが膵臓への浸潤が高度で非切除,胃空腸吻合術のみとなった.TS-1を用いた化学療法を開始し,1サイクル後のCTでは胃前庭部の腫瘤,周囲リンパ節とも縮小し,PRと判定した.3サイクル後はCT上,胃の腫瘤および周囲リンパ節とも指摘できずCRとなった.1年間CRを持続した後,再度の開腹手術で幽門側胃切除術を行った.病理組織学的検索では切除標本に癌細胞の遺残はみられなかった.TS-1は経口であるため外来投与可能であり,患者のQOLを損なわない化学療法である.今回,初回手術時には非切除となった高度進行胃癌に対して経口化学療法剤であるTS-1を投与してCT上,CRとなり,再手術を行い病変部を切除しえた.病理組織学的検索では切除標本に癌細胞の遺残はみられず,今後切除不能例を含めた高度進行胃癌に対してTS-1が有用となる可能性が示唆された.
索引用語
gastric cancer, chemotherapy, TS-1
日消外会誌 36: 1530-1534, 2003
別刷請求先
廣吉 基己 〒433-8558 浜松市三方原町3453 聖隷三方原病院外科
受理年月日
2003年6月25日
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