症例報告
下行結腸癌を合併したCrohn病の1手術例
長尾 宗紀, 舟山 裕士, 福島 浩平, 柴田 近, 高橋 賢一, 小川 仁, 橋本 明彦, 木内 喜孝1), 増田 高行2), 佐々木 巌
東北大学大学院生体調節外科学(胃腸外科), 同 消化器病態学1), 東北大学医学部保健学科病理検査学分野2)
症例は29歳の男性で,家族歴に特記事項はない.平成11年11月に大腸型Crohn病の診断を受け,以後近医にて経過観察されていた.平成13年2月に腸閉塞を発症し,IVH管理となっていたが,下行結腸にCrohn病による著明な狭窄を認め,全身状態も不良であったため,同4月に緊急手術にて回腸瘻造設術のみを施行し,平成13年11月,大腸亜全摘,回腸直腸吻合,回腸瘻閉鎖術を施行した.病理組織学的には全層性の炎症像,非乾酪性肉芽腫など,Crohn病としての典型的な像が見られたが,病変部の中に深達度ssの高分化型腺癌の合併と周囲粘膜にp53陽性のdysplasiaが認められた.術後第33病日より化学療法を施行し,特に副作用なく退院となった.現在,癌の再発の徴候を認めず,当科外来にて化学療法を継続中である.Crohn病においても常に癌合併の可能性を念頭におくべきであり,今後は癌の早期発見のための手法の確立が必要と考えられた.
索引用語
Crohn's disease, colonic cancer
日消外会誌 37: 1497-1502, 2004
別刷請求先
長尾 宗紀 〒980-8574 仙台市青葉区星陵町1-1 東北大学大学院生体調節外科
受理年月日
2004年2月25日
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