症例報告
IIc型早期胃癌の直下にアニサキスによる好酸球性肉芽腫を認めた1例
齋藤 克憲, 橋田 秀明, 岩代 望, 大原 正範, 石坂 昌則, 近藤 哲*, 加藤 紘之*
国立函館病院外科, 北海道大学大学院腫瘍外科*
今回我々はIIc型早期胃癌と診断され,病理組織所見にて直下にアニサキスによる好酸球性肉芽腫を認めた1例を経験したので報告する.症例は77歳の男性.20年来の胃潰瘍の診断にてH2-blocker,消化性潰瘍治療薬を内服していた.平成14年9月,定期検診目的の胃内視鏡検査にて胃体下部大彎側にIIc+III型病変を指摘,組織生検にてgroup Vと診断され,深達度がsm以上の可能性があるとして外科紹介,幽門側胃切除術を施行した.腫瘍は0.8×0.8 cmのIIc型乳頭腺癌で深達度sm1,またそのほぼ直下の固有筋層内に好酸球性肉芽腫を認め,この中心部にアニサキス虫体を認めた.連続切片からアニサキスはIIc部分から刺入したと思われた.アニサキスが癌や潰瘍など粘膜の脆弱部から胃壁内に進入する可能性はすでに指摘されているが,本症例のごとく慢性化した場合,虫体が鏡視下に視認出来ないため好酸球肉芽腫を癌の一部と誤認する可能性があり,診断上注意が必要である.
索引用語
gastric cancer, gastric Anisakiasis
日消外会誌 37: 1829-1833, 2004
別刷請求先
齋藤 克憲 〒060-8638 札幌市北区北15条西7丁目 北海道大学大学院腫瘍外科
受理年月日
2004年6月30日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|