症例報告
15年以上の慢性痔瘻経過中に発症した痔瘻癌の2例
廣 純一郎, 井上 靖浩, 渡部 秀樹, 小林 美奈子*, 三木 誓雄, 楠 正人
三重大学第2外科, 同 先進医療外科*
痔瘻癌は難治性痔瘻の経過中に発生するまれな疾患であるが,長期経過中に発症するため,確定診断は遅れがちとなる.今回,15年以上の慢性痔瘻経過中に発症した痔瘻癌の2例につき文献的考察を含め報告する.症例1は62歳の男性で,痔瘻根治術後17年目に再発を来し,外科的治療にて改善せず,粘液分泌と疼痛を伴う腫瘤を形成し紹介となった.同部位の生検で痔瘻癌と診断し腹会陰式直腸切断術を施行した.術後10年の現在無再発生存中である.症例2は49歳の男性で,約18年の慢性痔瘻の経過があり,肛門狭窄のためS状結腸人工肛門造設術を施行後,当院紹介となった.瘻孔からの生検にて痔瘻癌と診断.腹会陰式直腸切断術を施行した.術後6年目に腹膜播種にて死亡した.慢性難治性痔瘻においては,痔瘻癌も念頭におき,定期的な画像検査や生検を行い,早期診断に努めることが重要であると考えられた.
索引用語
adenocarcinoma, anal fistula
別刷請求先
廣 純一郎 〒514-8507 津市江戸橋2-174 三重大学第2外科
受理年月日
2004年9月22日
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