巨大な壁外発育とyolk sac tumorへの分化を示した胃癌の1例

吉田　徹^＊, 島影　尚弘, 草間　昭夫, 内田　克之, 岡村　直孝, 田島　健三, 塚田　一博^＊

長岡赤十字病院外科, 富山大学第2外科^＊

　症例は43歳の女性で，下腹部腫瘤を主訴に近医を受診．貧血と下腹部に小児頭大の腫瘤を指摘され当院婦人科を経て当科紹介となった．入院時血清AFP値が42,735 ng/mlと異常高値を示していた．精査の結果，巨大な壁外発育を呈するAFP産生胃癌と診断され手術を施行した．胃体部大彎から連続した14×12×12 cm大の腫瘍を認め，横行結腸間膜へ浸潤していた．明らかな腹膜播種は認めなかったが，少量の淡血性の腹水の細胞診ではclass Vであった．幽門側胃切除，横行結腸合併切除を施行し，Stage IV（T4（SI），N1，H0，P0，CY1）であった．病理組織診断では潰瘍底には中分化腺癌，壁外腫瘤にはyolk sac tumorと二つの組織からなる腫瘍であった．腺癌の一部とyolk sac tumorのほとんどにAFP陽性細胞が認められたことより，この腫瘍の組織発生は胃壁内の腺癌細胞のretro-differentiationと考えられた．

索引用語
yolk sac tumor, gastric carcinoma, AFP

別刷請求先
吉田　　徹　〒930-0194　富山市杉谷2630　富山大学第2外科

受理年月日
2006年11月22日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です