症例報告
左側口蓋扁桃転移を来したがTS-1が著効した胃癌根治術後の1例
南 一仁, 津谷 康大, 鈴木 崇久, 宮原 栄治, 亀田 彰, 野宗 義博
済生会広島病院外科
症例は58歳の女性,2005年9月,胃癌の診断にて胃全摘術およびD2郭清を施行した.進行度はpT3,pN2,sH0,sP0,pCY0,cM0;fStage IIIBであり,総合的根治度Bが得られた.組織型は非充実型低分化腺癌(por2)であった.2005年11月より術後補助化学療法としてTS-1 100 mg/dayを開始した.この治療開始3日目に,患者は咽頭違和感を自覚した.患者の口腔内を観察し,左口蓋扁桃が30 mm径に腫大しているのを確認した.生検にてgroup V(por2)の診断を得,原発巣の組織型と類似していることより胃癌の左口蓋扁桃転移と診断した.この時点で,CTにて全身検索を施行したが,他臓器に転移・再発を示唆する所見は認めなかった.TS-1投与開始14日目に完全奏効(以下,CR)の腫瘍縮小効果が得られ,2006年6月まで総合効果CRが維持された.胃癌の口蓋扁桃転移は,極めて予後が悪く,患者のquality of life(以下,QOL)低下が著しい,と報告されている.TS-1投与による胃癌口蓋扁桃転移巣の縮小効果が,患者に予後の改善および良好なQOLをもたらすことが期待される.
索引用語
tonsillar metastasis, gastric carcinoma, oral TS-1 therapy
日消外会誌 40: 1775-1780, 2007
別刷請求先
南 一仁 〒731-4311 安芸郡坂町北新地2-3-10 済生会広島病院外科
受理年月日
2007年4月25日
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