症例報告
日本住血吸虫症に合併した同時性多発進行大腸癌および大腸腺腫の1手術例
保科 克行1)2), 保坂 晃弘1), 松本 潤1)
都立府中病院外科1), 東京大学医学部附属病院第1外科2)
症例は66歳の男性で,2007年9月に腹痛を主訴に救急外来を受診した.山梨県生まれで10歳時に日本住血吸虫症による肝障害で治療歴あり.イレウスの診断で治療を開始し,イレウス管による減圧後の検査でS状結腸2重進行癌および腺腫(2か所)の診断となった.生検で高分化型腺癌の下層に日本住血吸虫卵を認めた.10月に高位前方切除術を行った.術後5日目に黄疸を認め軽快したが,肝生検では虫卵を認めた.日本住血吸虫症と大腸癌との関連性については諸説あるが,結論はでていない.大腸の同一領域に多発癌,多発腺腫を認めた報告はまれであり,同感染症の発癌性が強く示唆される症例であった.本症例は肝炎の発症もあり,より厳密なフォローを必要とし,大腸に関しては今後のsurveillanceも検討すべきと考えられた.
索引用語
schistosomiasis japonica, multiple colon cancer, fiberscopy
別刷請求先
保科 克行 〒113-8655 文京区本郷7-3-1 東京大学医学部附属病院第1外科
受理年月日
2009年9月16日
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