症例報告
家族性発症を認めた胃内多発印環細胞癌の1例
杉町 圭史, 東 秀史, 北川 大, 田中 旬子, 永吉 洋介, 水田 篤志, 牧野 一郎, 安蘇 正和, 下釜 達朗*
新日鐵八幡記念病院外科, 同 病理*
症例は32歳の女性で,心窩部痛を主訴に上部消化管内視鏡を行ったところ胃体上部大彎に約1.5 cmの発赤調の隆起病変を認め,生検にてsignet-ring cell carcinomaと診断された.胃全摘を施行したところ肉眼所見では既知の病変以外に異常を認めなかったが,胃全割病理組織学的検査にて既知の病変を含めて胃全体に38個の粘膜内多発癌病変を認め,すべてsignet-ring cell carcinoma,深達度Mであった.家族歴は祖父,母,叔父,弟に若年発症のスキルス胃癌があり家族性発症が強く疑われた.本症例は家族内集積のある若年発症の多発印環細胞癌であることから,欧米で報告されているE-カドヘリン遺伝子異常を原因としたびまん性遺伝性胃癌の家系に臨床経過が類似しており,遺伝的要因の関与が疑われる興味深い症例であると考えられた.
索引用語
juvenile gastric cancer, familial gastric cancer, E-cadherin
別刷請求先
杉町 圭史 〒805-8508 北九州市八幡東区春の町1-1-1 新日鐵八幡記念病院外科
受理年月日
2010年1月27日
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