原著
肝切除後再生肝に対する経門脈性リピオドールおよびaclarubicin投与の安全性に関する基礎的検討
鈴木 裕之, 宮崎 勝, 磯野 敏夫, 奥井 勝二
千葉大学医学部第1外科
肝切除後の残肝再発の抑制を目的として,経門脈的なリピオドール(LP)およびaclarubicin(ACR)投与の正常肝と肝切除後再生肝に及ぼす影響をラットを用い検討した.(1)正常肝でのLPおよびACRの門脈内投与による血清transaminase値,アミノピリン呼気テスト(ABT)値の経過は生食群と差を認めなかった.(2)再生肝DNA合成能はLPおよびACRにより24時間で有意の抑制を認めたが,そのピークは生食群の24時間に比べ36時間以降に遅延していた.(3)再生肝における血清transaminase値の上昇は正常肝に比べ強いが生食群と差を認めず,またABTも生食群と差異を認めず回復し,3週目で前値に復した.(4)生存率は正常肝,再生肝で全群100%であった.以上よりLPおよびACRの門脈内投与は正常肝への影響は少なく,再生肝に対しては肝切除直後の軽度の肝再生の抑制と遅延をもたらすも,その後の肝細胞機能の回復は順調で,投与量および時期を考慮すれば安全な方法と思われた.
索引用語
hepatectomy, intraportal chemotherapy, lipiodol, liver regeneration
別刷請求先
鈴木 裕之 〒280 千葉市亥鼻1-8-1 千葉大学医学部第1外科
受理年月日
1990年10月11日
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