原著
肝動脈切離を伴った肝切除術に対するartificial arterio-portal shuntの効果に関する実験的研究
中郡 聡夫, 浅野 武秀, 剣持 敬, 後藤 剛貞, 榎本 和夫, 坂本 薫, 磯野 可一
千葉大学第2外科
教室で施行した4例の残肝の肝動脈切離を伴う肝切除術の予後は,肝不全死2例,入院死亡1例と不良であった.そこで残肝肝動脈切離を伴う肝切除術に対するartificial arterio-portal(A-P)shuntの効果を実験的に検討した.control群(肝切除+肝動脈切離)とA-P群(肝切除+肝動脈切離+A-P shunt)を比較すると,組織酸素分圧はcontrol群(n=4)54.0±14.2 mmHgに対しA-P群(n=4)65.3±14.8 mmHgと有意に(p<0.006)上昇し,門脈圧はcontrol群(n=5)12.3±1.6 cmH2Oに対しA-P群(n=6)16.2± 2.4 cmH2Oと軽度上昇した.control群(n=7)及びA-P群(n=10)の術後肝機能は,第1病日のGOTがcontrol群1,467±687 U/L,A-P群877±446 U/L,第1病日,第3病日のhepaplastin testはcontrol群39.9±19.8%,29.0±4.3%に対しA-P群では55.6±20.1%,82.0±47.3%とA-P群の肝障害は軽度であった.術後生存率もA-P群で改善を認めた.肝切除術において肝動脈再建が不可能な場合,A-P shuntは試みてよい術式と考えられた.
索引用語
artificial arterio-portal shunt, arterialization of the portal vein, dearterialized liver, ligation of hepatic artery, hepatectomy
日消外会誌 25: 1007-1011, 1992
別刷請求先
中郡 聡夫 〒280 千葉市亥鼻1-8-1 千葉大学医学部第2外科
受理年月日
1991年12月10日
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