症例報告
Dyskeratosis congenita患者に発生した胃癌の1例
松下 耕太郎, 山本 眞也, 岡田 節雄, 篠原 篤, 田中 聰
香川医科大学第1外科
35歳男性のDyskeratosis congenita患者に発生した胃癌を経験した.
Dyskeratosis congenitaは,網状皮膚色素沈着,爪甲異形成,粘膜白板症を3主徴とするまれな先天性の外胚葉発育異常症であり,Zinsser-Cole-Engman syndromeともいわれる.予後不良疾患で,50歳以上の延命は少なく,粘膜白板症の癌化と再生不良性貧血による感染症が,予後決定因子であるといわれている.
症例の主訴は食思不振と体重減少で,上部済化管X線検査と内視鏡検査で胃癌と診断し,胃切除術を施行した.肝浸潤と腹膜播種を伴う胃前庭部中心のBorrmann3型の管状腺癌であり,粘膜白板は存在しなかった.
Dyskeratosis congenitaでは,粘膜白板症という前癌状態からの発癌とは別に,消化管腺癌の若年期発生が高率であることが推測されるので,本症患者の経過観察に際しては,この点に特に留意する必要があろう.
索引用語
dyskeratosis congenita, ideopathic portal hypertension, gastric cancer
日消外会誌 25: 1081-1084, 1992
別刷請求先
松下耕太郎 〒761-07 香川県木田郡三木町大字池戸1750-1 香川医科大学第1外科
受理年月日
1991年12月10日
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