症例報告
正常肝に発生し多彩な組織像を呈した硬化型肝細胞癌の1例
泉 貞言, 大橋 龍一郎, 小野田 裕士, 鈴鹿 伊智雄, 塩田 邦彦
香川県立中央病院外科
症例は69歳の男性で,肝機能異常を認め精査したところ肝腫瘍が発見された.血液生化学検査では,軽度貧血と肝・胆道系酵素の上昇を認めた.肝炎ウイルスは陰性でAFP・PIVKA-IIは著明な高値を呈した.腹部Dynamic CTでは肝S5~S4中心に不染域を有する9 cm大の濃染腫瘤像を認めた.肝細胞癌(以下,肝癌と略記)の術前診断にて肝S4+5区域切除を施行した.病理検査所見では著しい線維化と多彩な組織像を呈する肝癌細胞を認め硬化型肝癌と診断された.全肝癌の数%の頻度といわれる硬化型肝癌の大部分は,ウイルス肝に発生し中分化型の組織像を呈するといわれているが,その特徴・性格などいまだ不明な点も多い.今回,正常肝に発生したまれな硬化型肝癌を経験したのでその特徴的な画像・病理所見について報告するとともに文献的検討も行った.
索引用語
scirrhous HCC, normal liver, without virus hepatitis
日消外会誌 39: 1385-1390, 2006
別刷請求先
泉 貞言 〒760-8557 高松市番町5-4-16 香川県立中央病院外科
受理年月日
2006年1月25日
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