このページでは消化器外科に関するあれこれにお答えします.

1.消化器外科医に向いている人はどんな人ですか?
手を動かすことが好きな人,チームで働くことが好きな人,自分の手で患者さんの病気を治したい人,最後まで患者さんに向き合いたい人に向いています.
2.学生の時点で,消化器外科に向いているか分からなくても大丈夫ですか?
もちろん大丈夫です.最初から「自分は外科向きだ」と確信している人ばかりではありません.実際に見学や実習,研修を通して,手術の面白さと患者さんとの関わりの深さに惹かれて進路を決める人も多くいます.もともと内科志望で,研修医の間に外科志望に転向した人も少なくありません.某大学の調査では,最初から消化器外科志望は10%程度で,約50%は内科や麻酔科など他の診療科志望からの転向という結果でした.
3.女性でも消化器外科医になれますか?
もちろんなれます.消化器外科という仕事に興味を持ってくれる方であれば,性別は関係ありません.確かに従来から男性の方が多い領域ではありますが,最近女性消化器外科医も増えつつあります.一般論ですが,概して女性は細かい作業が得意な人が多いので,消化器外科手術には向いています!
4.女性の場合,出産後にも消化器外科医を続けられますか?
はい.育児支援や勤務形態の柔軟化が進んでおり,実際に多くの女性外科医が活躍しています.重要なライフイベントをサポートできる環境が整ってきています.
5.不器用でも外科医になれますか?
問題ありません.技術はトレーニングで向上しますし,最近は教育体制が以前より充実しています.何より重要なのは,継続力や,患者さんの思いと誠実に向き合う姿勢です.
6.体力がないと消化器外科医にはなれませんか?
心配いりません.手術がどれも長時間かかるわけではありませんし,多彩な疾患と多種多様な術式があるのが消化器外科です.また,最近では長時間手術では交代制を導入してスタッフの負担軽減に努めている施設もあります.夜間の呼び出しや緊急手術参加の際は,翌日に休養できるように,多くの施設で取り組みがなされています.またロボット支援手術の普及により,座ってできる手術も増えています.
7.手術って難しそうで不安です.自分にもできるようになりますか?
専門医プログラムによって,段階的なトレーニングと指導体制が整っていますので,心配要りません.指導医のサポートのもとで,技術を身につけることができます.
8.消化器外科医って「手術だけ」の仕事ですか?
いいえ.診断,術前治療,手術,周術期管理,術後の外来でのフォロー,さらには化学療法や緩和医療まで幅広く関わります.多くの素養が身につけられるのがメリットで,患者さんと二人三脚で,長期的な治療に関われるのが特徴です.
9.忙しいイメージがありますが,ワークライフバランスは取れますか?
施設によりますが,近年は働き方改革が進み,オンオフのメリハリをつけた勤務が可能になっています.チーム制が進んでいる病院も多く,以前よりずいぶん働きやすい職場が多くなりました.
10.人間関係やチームの雰囲気が心配です.やっぱり外科は厳しい世界ですか?
患者さんの安全を守る責任が大きい仕事であり,厳しい場面があるのも事実ですが,近年は本学会から「ハラスメント根絶宣言」が発出されたこともあり,後進の教育方法は以前とずいぶん変化し,若手を支えながら育てる文化が広がっています.実際に見学して,雰囲気を自分の目で確かめることがおすすめです.
11.消化器外科医になると,どんな専門医資格が取れますか?
消化器外科では,外科専門医を基盤に,消化器外科専門医や内視鏡外科技術認定医,肝胆膵外科高度技能専門医,食道外科専門医,大腸肛門病専門医,肝臓専門医など,様々な資格取得が可能です.外科専門医は5-6年で取得でき,以前では取得に10年以上かかっていた消化器外科専門医も制度改変により,努力すれば8年程度で取得できるようになりました.自分の興味,関心のある領域に応じて資格を取得していくプロセスで,技術と知識を磨きながら成長を実感していけることが消化器外科の魅力です.
12.専門性が細分化されすぎていて,将来が見えにくいのでは?
むしろ選択肢が多いことが強みです.早期に方向性を決める必要はなく,修練を積んでいく中で自分に合った分野(食道・胃・大腸・肝臓・胆道・膵臓など)を選べるのが魅力です.
13.若いうちから執刀のチャンスはありますか?
はい.消化器外科領域は,ベーシックな手術から高難度手術まで難度が多岐にわたるのが特徴です.施設やプログラムにもよりますが,基本手技から段階的に経験を積み,上級医指導のもと,若手のうちから執刀を経験できる機会があります.最初は小さな一歩でも,自分の成長を実感できるのが外科の魅力です.初執刀,初めての胃切除,初めての腹腔鏡手術,初めてのロボット支援手術など,消化器外科では色んな「初めて」を経験出来ます.
14.ロボット手術や腹腔鏡手術は誰でも関われますか?
はい.多くの施設で若手のうちから関わる機会があります.将来的には高度な低侵襲手術の術者を目指すことも可能です.
15.AIが急速に発展していますが,外科に影響がありますか?
実際にAIに手術動画を読み込ませて,手術機器に実装し,手術支援をさせようという試みも拡がっています.ただし,AIも手術支援ロボットも「外科医が使いこなす」ということに違いはなく,「AIが手術を全部やるので外科医は不要になる」ということは現状ではあり得ません.外科はこの先もずっと変わらず社会に必要とされる職業です.
16.消化器外科医のやりがいは何ですか?
自分の技術を磨き,その結果として得た手術スキルによって患者さんの人生を大きく変えることができる点です.腹膜炎や外傷などの救急の場面では,自分が手術しなければ助からない命を救うことができます.がん治療では,がんを「治す」ことに直接関われるのが大きな魅力です.手術をした患者さんを外来でフォローし,5年といった一定期間再発がないことが確認できれば「卒業」を告げられます.患者さんに,「病院に通院しなくても良い未来」を提供できることが,消化器外科医としてのやりがいだと思います.
17.逆に大変な点・デメリットは何ですか?
自分の手技が直接患者さんの命にかかわるという点で責任が大きいことや,多様な臓器を担当する領域であるだけに,技術の習得に時間がかかることなどがあります.ただ,それゆえに得られる達成感があります.
18.研究や留学のチャンスはありますか?
あります.一般的には大学院博士課程へ進んでから基礎的な研究を開始することになります.卒後数年〜10年以内に院へ進むケースが多いです.大学院では,研究へ専念するか臨床と研究を両立しつつ,医学博士取得を目指します.国内留学は,消化器外科学会が支援システムを立ち上げていますので,行きたい施設に行ける体制が整っています.海外留学は,大学病院や医療機関と連携のある施設へ学びにいくことが多いですが,自ら海外の施設へ直接オファーをすることもあります.
19.大学病院と市中病院の違いを教えてください.
大学では「臨床・研究・教育」が柱ですので,基本的にそれら全てに関わることになります.また先進的なことや他施設では難しい症例にチャレンジしていかないといけない,砦のような立場にあります.市中病院は,臨床がメインではありますが,自分で臨床研究を進めることもできますし,研修医や学生などの教育に携わることもあります.
20.地方や都会で働き方は変わりますか?
症例数や役割は異なりますが,どちらでも重要な役割を担います.都市部のハイボリュームセンターで多くの手術に携わることも,地方において手術だけでなく地域医療に貢献する道も大きな魅力です.
21.忙しい割に給料は安いのでしょうか?
現在の外科医不足やこれまで消化器外科医が国民の命を守るためにしてきた貢献度が認められ,令和8年の診療報酬改定で,消化器外科医療に特別加算がつくことになったため,消化器外科医の給与が増えることに決まりました.現時点でも時間外手術加算を外科医へちゃんと還元する動きが多数の施設で出てきていますし,外科医へのインセンティブがしっかり認められるように,学会としてこれからも活動を続けていきたいと思います.
22.施設や手術見学はどのように参加できますか?
多くの施設で随時受け入れています.近年オンライン説明会やハンズオンセミナーも増えています.このページで随時,情報を公開していきます.
23.忙しい中でどうやって勉強しているんですか?
受験勉強のように毎日机に向かうというよりは,臨床経験を積むことで自然と体に染み付くこともありますし,臨床の疑問点や興味が湧いたところを自身で調べていくうちに身に付くという感覚です.また,臨床論文や学会発表などの機会に疾患に関する疫学・治療などを調べていくことで知識・理解が深まっていくこともあります.
24.研修医のうちにやっておくと良いことはありますか?また消化器外科を勉強する上でおすすめの書物があれば教えてください.
まずは,外科に限らず幅広い領域を学びましょう.消化器外科をローテートする際は,実際に手術している場面や病棟業務の様子,カンファレンスなどを見て,現場の雰囲気を知ることが大切です.その上で,解剖,縫合結紮,周術期管理,救急対応の基本を少しずつ学んでおくと良いでしょう.ただし,指導医がしっかりサポートしてくれるので,外科医になってからのスタートでも焦る必要は全くありません.書物に関しては,世の中にはたくさんの手術書や教科書がありますのでご自身に合ったもので良いと思います.また,本学会からも消化器外科の専門書を出版しておりますので参考にしていただけると幸いです.
25.消化器外科を選んで後悔しませんか?
大変な分,やりがいが非常に大きい分野です.「患者さんに深く関わりたい」「手術を極めたい」「たくさんの人の役に立ちたい」という思いがあれば,圧倒的に満足度の高いキャリアになり,自分の幸せな人生につながる仕事です.