―ワークショップ―
ワークショップは完成した研究成果より,むしろ未完成の進行中の研究をとりあげるセクションである.聴衆との討論の中で助言や今後の方向性が指摘される.斬新な考えや新しい方向などを示すような発表が望ましい.発表内容が多岐にわたることから総合討論は司会者の判断で有無を検討する.
(日本消化器外科学会「学術集会プログラムの定義」)
1.【肝胆膵】再発肝細胞癌に対する再肝切除 vs サルベージ生体肝移植
詳細
近年,肝細胞癌に対する治療は肝切除,肝移植,肝動脈化学塞栓療法,経皮的ラジオ波凝固に加え,粒子線,複数の分子標的治療薬や複合免疫療法が登場し,治療選択肢が増えている.このなかで,癌の除去と同時に背景肝疾患を根本的に治療できる唯一の治療は肝移植のみであり,再発肝細胞癌に対するサルベージ生体肝移植が注目されている.非代償性肝硬変を伴う肝細胞癌に対する肝移植は,5-5-500基準が採用されたが,更なる適応拡大についての議論には,本邦での肝切除技術やドナー事情を踏まえる必要がある. 本セッションでは,再発肝細胞癌に対する最善の治療戦略を,再肝切除,サルベージ生体肝移植の立場から議論していただきたい.
2.【肝胆膵】肝胆膵のSSI対策 ENGLISH
詳細
肝胆膵領域の手術は膵液瘻・胆汁瘻をはじめとした多くの術後SSIが認められる.特に術前治療が行われるようになった昨今ではこれらの治療期間中の胆管炎などの感染機会が術後SSIに及ぼす影響も明らかになりつつある.周術期の栄養・ドレーン管理・抗菌薬治療・ドレナージなど各施設で実施しているSSI予防・治療の実際とその成績についてもちよっていただき,SSI対策のベストプラクティスが何なのか議論していただきたい.
3.【肝胆膵】消化器移植医療の現状と今後の展望
詳細
消化器移植医療は,肝移植を筆頭にこの30年間で急速に発展し,いまや日常臨床の一つとなった.一方で,働き方改革に伴う移植外科医のwork life balanceをいかに改善していくか,また,COVID-19感染拡大下でいかに安全に移植医療を実施していくかなど,移植医療を取り巻く環境の変化による新たな課題も表出している.本セッションでは,消化器移植医療の発展のために,移植医が直面する問題点を提示し,その解決に向けた取り組みを論じていただきたい.
4.【肝胆膵】遺伝子パネル検査は肝・胆・膵癌の治療方針を変えたか?
詳細
分子標的薬の登場により胆道癌の遺伝子パネル検査が大きく進むことが予想されている.まだ途についたばかりであるが,遺伝子パネル検査が導入され,胆道癌治療の実際がどのように変化したかをワークショップ形式で議論したい.
5.【肝胆膵】短・長期成績に基づく膵癌に対するロボット支援手術の再評価
詳細
2020年に膵癌に対するロボット支援手術の保険適応が承認され,急速に広まりつつある.しかしながら,膵癌に対するロボット支援手術の開腹や腹腔鏡(補助下)膵癌手術に対する優位性が十分に示されたといは言いがたい.短期成績のみならず,癌の術後再発率や術後生存率などの長期成績からもロボット支援手術の評価を行っていただきたい.
6.【肝胆膵】膵全摘up to date ENGLISH
詳細
膵全摘は,外科的糖尿病発症が必須であるためできるだけ避けること,とされてきた.しかしながら近年の新たなインスリン製剤の登場と,SAP, CSIIなどのデバイスの進歩により血糖管理は大きく変わっており,膵全摘の適応にも変化が見られるようになった.膵全摘に対する最新の治験をあつめたワークショップとしたい.
7.【上部】進行消化管GISTに対する長期的治療戦略(要望演題に変更)
詳細
8.【上部】減量・代謝改善手術の治療効果とQOLの評価 ENGLISH
詳細
肥満外科手術は,国内では腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を中心に広く行われるようなり,施設数・症例数とも急速に増加している.2021年に日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本肥満症治療学会の3学会により発表されたコンセンサスステートメントにおいて,減量・代謝改善手術は2型糖尿病に対し検討するべき治療選択肢として位置づけられ,今後ますますの発展が見込まれる.本セッションでは,減量・代謝改善手術による減量効果や合併疾患の制御が,術後の患者のQOL向上にどの程度寄与しているか,各施設の治療成績を提示しつつ手術の妥当性や今後の展望について議論いただきたい.
9.【上部】McKeown食道切除・胃再建における至適再建経路 ENGLISH
詳細
食道癌に対して本邦で最も行われている外科切除はMcKeown食道切除(頸部吻合)であり,その約9割の症例で再建臓器として胃が用いられる.その際の胃管挙上経路には胸壁前,胸骨後,後縦隔の3経路があり,縫合不全合併時の重症化の程度や対応のしやすさ,経管栄養tube留置の安全性,経路の長短など,それぞれに利点・欠点がある.各施設における経路の変遷や特徴,経路作成の工夫,周術期成績や機能評価に関して述べ,至適再建経路について論じていただきたい.
10.【上部】噴門側胃切除の手術手技・再建
詳細
ピロリ陰性上部胃癌の増加にともない,噴門側胃切除術を施行する頻度はここ数年明らかに増加している.噴門側胃切除術後の再建法については,噴門形成付加食道残胃吻合,上川法,mSOFY法,ダブルトラクト法,空腸間置法などさまざまである.術後短期成績はもちろんのこと,術後長期の栄養評価・機能評価についても成績を出していただき,至適再建法について議論していただきたい.
11.【下部】閉塞性大腸癌の治療戦略 ENGLISH
詳細
本邦で大腸ステントが保険収載され10年が経過し,多くの施設でBridge to Surgery (BTS) が施行されている.2020年にはESGEガイドラインが改定され,BTS目的の大腸ステント挿入が推奨となったが,長期予後については議論の余地がある.また従来の一時的人工肛門造設や経肛門イレウス管による減圧後の手術を施行している施設も多く,いまだ治療方針が定まっていないのが現状である.また閉塞性大腸癌は局所進行癌であり,予後改善のための術前治療,術後補助化学療法のエビデンスもまだ少ない.本ワークショップでは,各治療成績の有効性と治療成績を示していただき,閉塞性大腸癌に対する治療戦略について議論していただきたい.
12.【下部】結腸癌に対する体腔内吻合
詳細
腹腔鏡下結腸切除術における吻合には体腔外吻合および体腔内吻合があり,それぞれ様々な吻合法(機能的端々吻合,Overlap法,デルタ吻合など)がある.体腔内吻合には腸管受動範囲の縮小や腸管蠕動運動改善などのメリットがある一方で,腹腔内汚染,播種などの懸念もある.本ワークショップでは体腔内吻合の有用性や安全に施行するための手技,成績について発表していただきたい.
13.【下部】大腸憩室症に対する腹腔鏡手術の治療成績
詳細
手術を要する大腸憩室症では,穿孔,瘻孔,膿瘍などの併存する病態により手術難易度が高い症例が多く,腹腔鏡手術の適応,治療成績もまとまった報告は少ない.上記の併存する病態を明記した上で,大腸憩室症に対する腹腔鏡手術の手技,治療成績をご報告いただきたい.
14.【下部】IBDに対するMIS
詳細
TaTME,ロボット,腹腔鏡など 最新の手術手技
IBDに対する手術は,比較的多くの施設で行われるようになりつつある.さらに最近では,腹腔鏡手術など低侵襲手術の導入も盛んに行われている.IBDに対する標準手術の手技の実際を提示いただき,将来への発展についても述べていただきたい.
15.【総論】各臓器サブサブスペシャルティ外科医の育成法
詳細
新専門医制度がスタートして外科専門医取得への道筋が示され,その後症例を蓄積して消化器外科専門医を目指す枠組みも各施設で整いつつある.しかしそののちの3階部分,肝胆膵外科高度技能医や内視鏡外科技術認定医を目指すにあたりどのように若手に症例を経験させるのかについてはまだ課題が多い.各施設におけるサブサブスペシャリティ取得のための戦略・枠組みや育成法について提示していただきたい.
16.【総論】術後合併症におけるfailure to rescueを防ぐために ENGLISH
詳細
消化器外科術後合併症は避けられない.しかしながら,合併症を早期に察知し,適切な処置を講じることでたとえ術後合併症が生じても救命することが大切である.術後短期成績が良好である施設と不良な施設の比較において,合併症率は変わらないものの,良好な施設ではfailure to rescue(術後合併症による死亡)の頻度が低いことが報告されている.それぞれの施設におけるfailure to rescue率を示していただき,各術式で,救命への鍵を論じていただきたい.
17.【総論】Oligometastasisに対する集学的治療戦略
詳細
Oligometastasisは他臓器に少数個の転移のみを認める状態である.集学的治療により切除が行えた症例では長期予後が得られることもある.しかしながら,各臓器における明確な治療戦略は未だ明らかでない.本セッションではoligometastasisを伴う消化器悪性腫瘍に対する各施設の治療戦略を提示して,今後の展望と課題についてご討議いただきたい.
18.【総論】サルコペニア・フレイルを防ぐ手術手技・周術期管理 ENGLISH
詳細
本邦における高齢者人口の急速な増加および手術患者の高齢化により,サルコペニアおよびフレイルの存在を念頭においた治療戦略・戦術を考えていくことが求められている.手術の低侵襲化はもとより,担癌患者に対する適切な評価と多職種の介入,適切な栄養管理が良好な治療経過を得るためには必要である.本セッションでは,サルコペニア・フレイルに対する各施設での診療の実際,安全性を高める手術手技や対策の工夫をご提示していただき,その有用性を議論していただきたい.
19.【総論】ダイバーシティがもたらす消化器外科医の新しい世界
詳細
科学技術推進機構によると,科学研究分野で必要な3つの多様性(ダイバーシティ)は人材の多様性,キャリアの多様性,働き方の多様性であるという.これらの多様性によって科学技術にイノベーションがもたらされるからである.特に重要なのは人材の多様性であるという.消化器外科領域でこれらの多様性を実現することによって,どのようなイノベーションを期待できるであろうか.本セッションでは,ダイバーシティ推進によって,手術・研究・社会など様々な場面への与えうるインパクトについて論じていただきたい.特に,ダイバーシティーに関する研究成果やアンケート結果など,エビデンスに基づいた発表を歓迎する.ダイバーシティがもたらしうる消化器外科領域の柔軟な発想に満ちた,新しい世界を迎えるために学会が果たしうる役割についても自由な発想で提案していただきたい.
|