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消化器外科医の働き方

大学病院勤務
河野 恵美子 先生

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河野 恵美子 先生
大阪医科薬科大学一般・消化器外科
河野 恵美子 先生

ひとりひとりが尊重され、多様な人が共存できる外科社会を目指して

私は2001年に外科医になり、2006年に出産しました。当時、育児支援制度が整っている施設は少なく、家事育児と両立しながら急性期病院で活躍する女性外科医は周囲にいませんでした。出産後は専業主婦になることを選択しました。
子供が1歳になった時、育児支援制度が充実している病院に復帰しました。しかし、現実は「24時間365日働けない」という理由で執刀・外来・患者受け持ちは許されませんでした。半年後トップダウン式で仕事が可能になりましたが、環境の厳しさに何度も心が折れました。そんなある日、断腸の想いで外科を去る女性医師の姿を目の当たりにしました。その姿を見ながら、誰かがやらなければ「女性が普通に働ける社会にはならない」と痛感し、2008年に女性医師の活動を始めました1
2016年に約9年に及んだ育児支援制度を離脱し、指導医として臨床業務を開始しました。しかし、家事育児・女性医師の活動さらに器械開発を並行して行うことは想像以上に大変で、最後は倒れてしまいました。
2019年、女性外科医の手術修練の研究と器械の研究・開発に専念すると決め、大阪医科薬科大学に飛び込みました。この決断は弟が膵癌で他界したことが一番の理由です。弟が亡くなる直前に「世界中の人の役に立つ仕事をする」と約束しました。受け容れてくださった教室の皆様には感謝しかありません。
この3年余りで当初の目標であった手術修練の研究は論文になり2、器械開発はグローバルカンパニーと新たに契約を交わし、製品を作るチャンスを得ました。

振り返ってみると、私の外科医人生は挫折ばかりでした。
その都度リチャードニクソンの言葉「A man is not finished when he is defeated. He is finished when he quits.」を思い出し踏ん張ってきました3
先日、母に「恵美ちゃんは死ぬときにあれやっとけばよかったって思わないやろうなあ。それってすごいことやなあ」と言われ、自身の外科医人生を少し肯定的に考えられるようになりました。

女性が外科で仕事をするのは簡単かといえば嘘になります。しかし、私たちを取り巻く環境は少しずつ変わりつつあります。外科に興味があるならまずは飛び込んでいただき、一緒に変えて下さったら嬉しいなあ…と思います。

  1. 令和2年度女性のチャレンジ賞受賞者名簿 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)
  2. Kono E, Isozumi U, Nomura S, et al. Surgical Experience Disparity Between Male and Female Surgeons in Japan. JAMA surgery. 2022 Jul 27.doi: 10.1001/jamasurg.2022.2938
    https://jamanetwork.com/journals/jamasurgery/fullarticle/2794668
  3. TEDx Namba speech: https://youtu.be/0eL6s7qDxwA
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