第80回日本消化器外科学会総会において、特別企画「消化器外科におけるハラスメント」(2025年7月17日[木])を開催し、「ハラスメント根絶宣言」を発出いたしました。

 2024年7月には、日本消化器外科学会将来構想委員会のもとに、ハラスメント対策ワーキンググループが設置されました。消化器外科領域におけるハラスメントの実態を把握するため、2024年11月から2025年1月にかけて、学会員を対象としたアンケート調査を実施しました。ハラスメント根絶宣言

 その結果、「過去10年間に何らかのハラスメントを受けた経験がある」72%、「何らかのハラスメントを見たことがある」93%という、驚くべき結果が得られました。また、「女性会員がセクシュアルハラスメントを受けた経験がある」37%、「パワーハラスメントを受けたことを理由に外科医を辞めようと思ったことがある」57%という結果も明らかになりました。

 これらの数字については、近年のハラスメントに対する意識の高まりに伴い、価値基準が厳しくなっていることも影響しており、過去の社会的認識と比べて高い数字になっている可能性があると考えられます。またしかし、厚労科研特別研究においては、「初期研修医が外科を希望していたが選択しなかった理由」として、「ハラスメントが多そうだから」という意見が多く挙げられました。これらの結果から、「消化器外科におけるハラスメント」は、昨今問題となっている「消化器外科医の減少」にも関係している可能性が示唆されました。

 一般企業などと比べて、医療界ではハラスメント対策がいまだ十分とはいえません。特に外科は、手術や患者の生命に関わる分野であり、技術の継承のために徒弟制度が根強く残ってきた経緯もあることから、ハラスメントが放置されやすい土壌があったのかもしれません。

 「ハラスメント根絶宣言」は、こうした背景と調査結果を踏まえ、今後、日本消化器外科学会として会員が安心して外科業務に従事できる環境を実現するため、ハラスメントに関する広報・啓発活動を継続すること、会員の関心と理解を深めること、そして目標達成のために定期的にアンケートを行うことなどを宣言したものです。

 日本消化器外科学会は今後も、ハラスメントの存在しない業界の実現に向けて、会員の皆様にご理解とご協力をいただきながら、取り組んでまいります。

 皆様のご理解とご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。

ハラスメント根絶宣言

 一般社団法人日本消化器外科学会(以下、本学会)は、あらゆるハラスメント行為の根絶を目指して、全ての関係者の人権と尊厳に配慮した学会運営を推進することを宣言します。 本学会は、本会員のハラスメント行為の防止に努めるために、以下の取り組みを行います。

1)パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、妊娠・出産・育児・介護等に関するハラスメント、アカデミックハラスメント、モラルハラスメント、外科業務に関するハラスメントなど、個人の尊厳を損なうあらゆるハラスメント行為に反対します。
※外科業務に関するハラスメント:パワーハラスメントなどと重複することもあるが,特に手術や術後管理などの外科医療に関する現場において、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動によりその労働者の就業環境が害されること。

2)学会ホームページや総会、大会等における広報活動と啓発活動を継続し、研修や講演の実施によりハラスメント防止に関する会員の関心と理解を深めます。

3)学会運営における会員、社員および関係者のハラスメントに関する言動に注意を払い、必要な配慮を行います。さらに会員に対するハラスメントに関するアンケート等を定期的に行うなど、その発生状況を注視してまいります。

4)本学会の役員は、特にハラスメント防止に対する関心と理解を深めると共に、会員や関係者に対する言動に必要かつ十分な注意を払い、会員の規範となるべく努めます。

5)本宣言とその取り組みについて、定期的な見直しを行い、社会情勢や学会の実情に応じて必要な改善を加えていきます。