日本消化器外科学会理事長
調 憲
【はじめに】
平素より消化器外科診療ならびに日本消化器外科学会の活動に格別のご理解とご尽力を賜り,心より御礼申し上げます.
また,地域医療体制確保加算2・外科医療確保特別加算につきまして,各医療機関においてご検討をいただいておりますこと,重ねて御礼申し上げます.本加算につきましては,各医療機関の経営状況,診療体制,人員配置,地域における役割などにより,対応を一律に定めることが難しく,取扱いに苦慮している医療機関も少なくないものと拝察しております.そのような状況においてこそ,今回の新たな加算が設けられた本来の趣旨に立ち返ることが重要であると考えます.
【本加算の本来の目的】
本加算は,現状のままでは将来にわたり深刻化することが懸念される「消化器外科医の減少対策」,すなわち診療科偏在への対策として設けられたものと理解しております.特に,外科医療確保特別加算は,医師個人への手当のみを目的とするものではなく,長時間労働の改善,休息の確保,タスク・シフト/シェアの推進など,消化器外科医が持続可能な形で働き続けられる環境整備と一体のものとして位置づけられています.
若手医師が外科,とりわけ消化器外科を選択しにくくなっている背景には,「消化器外科医はワーク・ライフ・バランスが保ちにくい」という認識が少なからず存在します.したがって,若手の消化器外科医を確保するためには労働環境改善を進めていく必要があります.また,現在,長時間かつ高難度な手術において執刀・助手として最前線で診療に従事している先生たちが,希望をもって働き続けるためには,労働環境と処遇改善の両輪が必要です.
【持続可能な医療提供体制に向けて】
また,深刻な人口減少,高齢化,労働力人口の減少を背景とする,いわゆる2040年問題に対応するためには,地域における医療提供体制の再構築が喫緊の課題です.“新たな地域医療構想“においては,構想区域における急性期拠点病院が,一定規模の人口圏(人口20万人程度)における急性期医療を担うことが期待されています.今回の加算においても,その要件として長時間かつ高難度な手術の実績(長時間高難度手術200例以上),特定機能病院または急性期総合体制加算の届出,地域における専門医育成体制の構築,機能分担や適切な集約化の旗振り役であることなどが設けられており,対象医療機関には,地域の消化器外科医療を支える中核的な役割が期待されているものと考えております.したがって,本加算の対象となる医療機関の消化器外科においては,これからも地域住民の皆様に安心で安全,かつ高度な消化器外科医療を持続可能な形で届けることが求められています.私見ではありますが,今回の診療報酬改定は,今後の急性期拠点病院における消化器外科診療のあり方を示すものであると受け止めております.
【各医療機関における今後の対話のお願い】
各医療機関における労働環境の改善状況が異なるために消化器外科医の力を十分に発揮するために必要な“処方箋”は,各医療機関の状況によって異なるものと考えております.外科医療確保特別加算については,少なくとも30%相当額を当該診療科の医師への手当として支給することが求められておりますが,同時に残る部分を含めて,労働環境整備や診療体制の充実にも活用し得るものと理解しております.一方で,先般,私が発出いたしました「お願い」につきましては,喫緊の課題であった処遇改善(医師個人へのインセンティブ)に言及するあまり,“処方箋”の両輪となるべき労働環境の整備についての説明が十分とは言えず,医師個人へのインセンティブに関する部分が強調されすぎていたと感じております.各医療機関におかれましては,医師個人へのインセンティブの多寡のみをもって議論するのではなく,病院執行部の方々と消化器外科の先生方との間で,それぞれの医療機関にとって最善の形となるよう,労働環境と処遇改善のあり方について建設的な議論をいただく事を切に願っております.
日本消化器外科学会としては,今後も消化器外科医療の持続可能性,若手医師の確保,働き方改革,地域医療提供体制の維持・発展に向けて,各医療機関の皆様とともに考え,取り組んでまいりたいと存じます.
何卒ご理解とご協力を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます.




