2025年度 日本消化器外科学会 国内留学プロジェクト

ご挨拶 ▼クリックすると開きます

日本消化器外科学会 理事長 調 憲

「国内留学プロジェクト」の始動に思う

 「国内留学プロジェクト」の始動、日本消化器外科学会の理事長として本当に嬉しく感じております。
 今、消化器外科医の減少は社会的な問題として広く社会に認識されるようになりました。この問題に対して私共は正面から取り組むことといたしました。そのための施策の方針として、「消化器外科の明るい未来を達成するためのロードマップ」を2024年7月、第79回総会(下関)で発出いたしました。そのロードマップの中で、消化器外科医のキャリア形成の支援を重要な課題として挙げさせていただきました。若手の医師が外科を選択しない理由の1つにキャリア形成が見えにくいという意見があったからです。消化器外科は習得すべき知識や技術も多く、一人前になるまでに時間がかかりそうという問題があるのだろうと思います。私は若い頃に先輩から「あなたが10年かかって達成したことを自分の後輩には5年でさせなさい。そうでなければ進歩がない。残りの5年で次世代の人たちは新しい事に取り組めるはずです。」と教えられてきました。この「国内留学プロジェクト」は一人でも多くの消化器外科医を志した若い先生方が一流の施設で学ぶ経験をすることで、高い技術を身に着け、少しでも短期間で成長することができる支援を提供したいという思いから立案されました。
 従来、日本消化器外科学会の教育委員会は専門医制度のe-ラーニングの整備、専門医試験の問題作成、資格判定など専門医制度を通した教育が主たる役割でしたが、今回それらのタスクをそれぞれの委員会にシフトし、新たに教育委員会を立ち上げました。この「国内留学プロジェクト」はリニューアルされた教育委員会の企画です。
 このプロジェクトでは長期間の研修が難しい皆さんにも、長期間の研修を希望する皆さんにも、それぞれの希望がかなえられるように多様なコースが準備されており、フレキシブルな選択が可能です。また、その選考には女性や医師少数地域の消化器外科医に関しても配慮がされると聞いております。本プロジェクトが若手の先生方にとって短期間で3階建ての資格へ手が届くキャリアプランへの支援となりますことを心から期待しております。
 受け入れ施設の先生方にはご負担をお掛けすることになりますが、若手消化器外科医を受け入れる経験やそれによるネットワークの構築は受け入れ施設の先生方にとってもかけがえのない経験となるものと思います。また、オール・ジャパンの支援体制は若手の先生方に希望と勇気をあたえるものと思います。なにとぞよろしくお願いいたします。
最後になりますが、本プロジェクトの制度設計から始動に関しまして多大なるご尽力をいただきました教育委員会委員長 板野 理先生を始めとした教育委員会の先生方に心から感謝を申し上げます。

日本消化器外科学会 理事長
調  憲

 

日本消化器外科学会 教育委員長 板野 理

日本消化器外科学会 国内留学制度 開設にあたって

 このたび、日本消化器外科学会において初めての試みとなる「国内留学制度」を立ち上げることとなりました。本制度は、教育委員会のもとで私が責任者として準備を進め、いよいよ実施の段階を迎えるものです。

 近年、外科医を取り巻く環境は大きく変化し、消化器外科医の減少は看過できない課題となっています。これまでの医局や地域の枠組みを超えた交流の機会は必ずしも十分ではなく、若手医師が希望する研鑽の場を得ることは容易ではありませんでした。そのため、首都圏以外や非医局所属の医師においては、とりわけ学びの機会に不均衡が生じていました。

 本制度の目的は、そうした格差を学会主導で解消し、志ある若手に公平にステップアップのチャンスを提供することにあります。出身大学や所属、性別や境遇にとらわれず、誰もが挑戦できる仕組みを整えることで、日本全国の外科医が学び合い、互いに切磋琢磨できる新しい文化を築きたいと考えています。

 プログラムは、超短期から長期に至るまで多様な選択肢を用意し、食道、胃、肝胆膵、大腸といった幅広い領域をカバーしています。見学から助手、さらに執刀に至るまで段階的に経験を積み、自施設に還元できるよう設計しました。また、女性医師や地域枠など、多様性に配慮した制度設計とし、将来にわたり持続可能なキャリア形成を支える仕組みとしています

 もっとも、この制度は始まったばかりであり、その理念を実際に形にできるかどうかは、学会員一人ひとりの協力にかかっています。とりわけ、若手を送り出す立場の指導医、そして受け入れて指導にあたる各施設の先生方の理解とご尽力なしには、制度は成り立ちません。全ての年代の外科医が垣根を越えて協力し合い、皆で育て、より良い制度へと発展させていただきたいと願っています。

 私は本学会教育委員長として、この歴史的な制度の立ち上げに携われたことを大きな誇りと感じています。しかしながら、この制度を真に価値あるものとするのは、全国の会員の皆さまの参加と交流にほかなりません。制度を活用し、学問的にも人間的にも豊かなつながりを築いていただくことこそ、日本の消化器外科全体をさらに活気づける原動力となると信じています。

 本制度が、若手外科医にとって未来への扉を開く機会となり、ひいては日本の消化器外科の発展に寄与することを心より願っております。

一般社団法人 日本消化器外科学会
教育委員長 板野 理

 

日本消化器外科学会 教育委員会 国内留学プロジェクト リーダー 阿部 雄太

このたび、調理事長および板野委員長のご支援のもとに始動する「国内留学プロジェクト」において、プロジェクトリーダーを務めさせていただくことになりました阿部雄太です。ここに、一言ご挨拶を申し上げます。

消化器外科は、幅広い知識と繊細かつ高度な技術を要する領域です。若手の先生方が自信を持って成長するためには、日常の診療・教育に加えて、異なる施設での経験や、多様な指導者との出会いが大きな糧となります。国内の優れた施設で集中的に学ぶ機会を提供する本プロジェクトは、通常のキャリア形成の中では得がたい「学びの加速装置」となることを目指しています。

特に本企画では、これまで地理的・時間的な制約から研修機会を得にくかった先生方にも門戸が開かれています。短期から長期まで多様なコース設定があり、ライフステージや希望に応じた選択が可能です。新たな環境での挑戦は、必ずや大きな自信と成長につながり、ひいては地域や社会への貢献に結びつくと確信しております。

受け入れ施設の先生方におかれましては、多大なご協力をお願いすることになりますが、この交流が双方向の学びをもたらし、全国的なネットワークの強化につながることを期待しています。若手医師の一歩を、学会全体で支え、共に未来を築いていければ幸いです。

「国内留学プロジェクト」が、多くの若手外科医にとって新たな可能性を切り拓く出発点となることを心から願っております。私自身も環境整備に尽力するとともに、本プロジェクトがより実り多いものとなるよう、皆様のご理解とご協力を賜れれば幸いです。

日本消化器外科学会 教育委員会
国内留学プロジェクト リーダー
阿部 雄太

国内留学プロジェクトとは

本プロジェクトは、日本消化器外科学会が主導し、医局や研修プログラムの枠を越えて、国内の研修施設において消化器外科の先進的技術や高難度技術を修得する機会を提供するものです。

これまで十分な研修の機会に恵まれなかった若手外科医に対し、成長と今後の活躍を後押しすることを趣旨としています。

目的

国内留学制度を通じて、以下の取り組みを推進します。

  1. 若手消化器外科医の成長を妨げる要因となっている、地域・所属施設・性別による不平等を学会主導で是正し、すべての若手医師に平等な成長の機会を提供します。
  2. 地域・所属施設・性別にとらわれない、自由な交流と学びの場を若手消化器外科医に提供します。

これらの取り組みを通じて、若手消化器外科医のキャリア形成と専門性の向上を支援します。

留学プラン

各専門研修領域(コース)ごとに、様々な長さの研修プログラムが用意されています。これらを組み合わせて研修生の希望に沿った研修プランを作成します。

プログラムの概要

研修期間の長さ別に、超短期(見学型)・短期(2週間~1か月)・中期(1か月~6か月)・長期(6か月~1年)の4種類の研修プログラムがあります。
各プログラムごとに大まかな達成目標(コンピテンシー)があり、それに沿った研修内容が定められています。研修終了後は目標を達成したかの評価とフィードバックが行われます。また研修生は終了時に報告書を作成します。

各プログラムの目標(コンピテンシー)の詳細については、各研修施設情報をご覧ください。

2025年度のプログラム募集人数

2025年度の各プログラムごとの募集人数は以下のとおりです。

①超短期間型プログラム(単回~複数回、研修日指定):40名
②短期間型プログラム(2週間~1か月):最大3名
③中期間型プログラム(1か月~6か月):④とあわせて3名
④長期間型プログラム(6か月~1年):③とあわせて3名

研修生の募集~研修開始まで

  1. 研修希望者は、本ホームページに掲載された募集要項および研修施設一覧を確認のうえ、希望する研修施設、研修プログラム、研修コースを選択し、申請書類ならびに推薦状を本学会事務局へ提出してください。
  2. 提出された書類に基づき、一次選考を実施します。
  3. 上位候補者に対して、研修希望施設による書類審査および面談を行い、双方の合意をもって研修施設が決定されます。
  4. 研修施設と研修生との間で必要な事務手続きを完了後、研修を開始します。

費用補助

短期~長期プログラムについては消化器外科学会より以下の費用補助があります。

  • 超短期間型プログラム(単回~複数回、研修日指定):なし
  • 短期間型プログラム(2週間~1か月):1週間あたり5万円
  • 中期間型プログラム(1か月~6か月):30万円 ※
  • 長期間型プログラム(6か月~1年):50万円 ※

※中・長期プログラムについては、原則として研修施設との雇用契約が発生します。

研修

  1. 各プログラムのコンピテンシーおよび、研修施設の指導者と相談のうえ設定した研修目標に従って研修を行います。
  2. 研修中に問題が生じた場合は、研修施設の指導者、メンター、または教育委員会事務局までご相談ください。
  3. 長期プログラムでは、研修期間中にメンターとの定期面談を実施します。
  4. 超短期・短期プログラムでは、経験した症例のレポートを提出し、指導医からフィードバックを受けます。
  5. すべてのプログラムにおいて、研修終了時に修了報告書をご提出いただきます。修了報告書は当ホームページにて公開されます。

研修中の相談

  • 研修中の問題点は何でも消化器外科学会事務局へ相談ください。
  • 研修生については、まず研修施設の指導医と相談いただきます。

メンター制度

本制度は、国内留学プロジェクト参加者が安心して研修に取り組めるよう、心身のケアと研修課題への助言を目的とした支援体制です。特に中期・長期型プログラムでは、個別にメンターを配置し、継続的なフォローを行います。

  1. メンターの配置と選定
    中期・長期型プログラムの研修者には1名ずつメンターを配置します。メンターは留学先以外の施設から選出され、日本消化器外科学会 教育委員会が管理する「メンターレジストリ」に所属する、同専門分野の若手〜中堅医師が担当します。
  2. 面談と報告
    研修期間中、最低3か月に1回、研修者とメンターが面談(オンライン可)を実施し、問題点の抽出と助言を行います。内容は所定フォーマットで教育委員会に報告します。
  3. 問題対応
    研修上の問題が確認された場合、教育委員会と事務局に共有し、必要に応じてメンターがオブザーバーとして対応に加わります。
  4. 修了者の役割
    中・長期プログラム修了者は、今後メンターとして指名される責務を負います。