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平成21年度厚生労働科学研究費補助金 がん臨床研究事業 採択のお知らせ


平成21年5月
会員 各位
有限責任中間法人日本消化器外科学会
消化器外科データベース委員会

平成21年度厚生労働科学研究費補助金 がん臨床研究事業 採択のお知らせ

研究課題  消化器がん外科診療の質を評価する指標の開発とがん医療の均てん化の推進
交付基準額 23,100,000円(うち間接経費 2,100,000円)
研究代表者 後藤満一,杉原健一,北川雄光,馬場秀夫,中越 享,冨田尚裕,島田光生,木村 理,近藤 哲,宮田裕章,本村 昇,橋本英樹

 わが国では,消化器がん外科手術症例の成績を全国規模で調査した報告はこれまで存在しませんでした.2006年,日本消化器外科学会は消化器外科データベース委員会を設置し,わが国の消化器がん手術の実態を明らかにする目的で,本学会の認定施設,関連施設に対しアンケート調査を行い,手術症例約33万例のデータが集積されました.これにより,各施設における115術式の症例数と死亡率が明らかになりました.術式別の死亡率には0.26%~3.72%と差があることが判明しました.一方,主な14術式において,消化器外科専門医の手術に対する関与を術者,助手,手術に関与しない,の3種類に区分し分析した結果,死亡あるいは合併症発生のリスク比に差のある術式が明らかとなりました.これらの調査結果は,消化器外科領域における専門医の位置づけ,研修のあり方,専門医資格と医療需給のバランスを検討するための資料となるとともに,国民への消化器がん外科治療に関する貴重な情報開示となります.一方,各症例の年齢,併存疾患,詳細な手術内容などの手術リスクは個々の症例で大きく異なり,この調査結果のみで単純に施設間の手術成績を比較することはできないと考えられました.

 そこで,リスク補正をした手術成績(risk-adjusted surgical outcome;RASO)を示すことができれば,施設間,患者間の比較も可能となり,施設評価の目標設定がより明確になると考えられます.RASOについては,米国外科学会(ACS)が1995年よりNational surgical quality improvement program (NSQIP)として確立した評価システムが既に存在しています(Ann Surg 236:344, 2002).各施設がACS-NSQIPに手術症例のデータを入力することにより,それぞれの評価項目について,全参加施設中での自施設の位置づけを知ることが可能となります.また,このようなフィードバックを通して,自施設の問題点を把握し解決することにより,外科治療成績の向上が得られることが示されています.

 わが国の消化器がん外科手術においても,RASOを評価できる指標を開発し,それをもちいたデータベースを構築することにより,さらなる消化器外科医療の質の向上,教育システムの評価が可能になると考え,2008年12月に平成21年度厚生労働科学研究費補助金に申請し,このたび採択されました.申請者はデータベース委員会の各委員に加え,理事長の杉原健一先生,日本外科学会との連携を推進するために近藤 哲先生,日本心臓血管外科学会ですでに同様のデータベースの構築に参画された宮田裕章先生,本村 昇先生,DPC関連データ収集に造詣の深い橋本英樹先生に分担研究者として加わっていただきました.

 本研究では,本学会が日本外科学会とも連携を持ちながら,RASOが評価可能なデータベースの構築を図るものでありますが,その中には専門医の関与を評価できるシステムを包含させ,消化器外科医教育システムの評価も可能にする特徴をもたせます.これにより,各施設は自らの消化器外科治療を総括した評価・比較が可能となり,各施設の提供する医療の質の向上,ひいては消化器がん外科医療の均てん化,わが国の消化器がん外科治療成績の向上を目指します.また,収集したデータの公開は,国民への消化器がん外科治療に関する貴重な情報開示になります.

 一方,現在,各学会のデータベース,院内がん登録,地域がん登録,DPC等,種々のデータベースが併存しており,医療現場におけるデータ入力の負担は過大です.できるかぎりこれらの統一化を図り,データ収集の効率化を図ることを目指しています.また,専門医申請,施設認定作業における会員の負担軽減とともに,臨床研究のサポートにも利用できるものにしたいと考えています.

 この研究の進捗状況は随時,学術集会等で報告していきますが,皆様のご協力,ご支援をお願い申し上げます.