一般社団法人 日本消化器外科学会

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Last Update:2019年8月28日NEW

日本消化器外科学会 外科研究の利益相反に関する指針 Q&A

I. 指針策定の目的に関するQ&A

Q1. 利益相反の管理は本来,研究者が所属する施設で行うものと理解していたが,学会が管理する利益相反とはどんなものですか?(本指針I〜IIIに関連)
A1. 学会員の多くは所属施設で研究を実施し,得られた成果を学会で発表します.研究の実施と発表という2つのステップのそれぞれにおいて,所属施設だけでなく,学会にも利益相反を開示することが求められると考えて下さい.
所属施設に対しては,当該臨床研究に携わる研究者全員が実施計画書と同時に利益相反自己申告書を施設長へ提出し,当該施設において利益相反マネージメントを受けることが勧められております(文部科学省・臨床研究の倫理と利益相反に関する検討班「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」).
一方,日本消化器外科学会が打ち出した今回の「外科研究の利益相反に関する指針」(以下,本指針)は,学会として行うすべての事業に関して,これを行う学会関係者の利益相反状態を自己申告によって開示・公開させ,これにより学会関係者の社会的・倫理的立場を守ることを目的としております.すなわち,日本消化器外科学会では,外科研究に関する発表演題,論文については,その題目に関連した利益相反状態を,自己申告により開示することが求められます.更に,本学会の全ての委員会については,委員長のみならず,委員全員が詳細な利益相反状態の開示・公開を義務づけられます.
Q2. 本指針と細則を守れば,法的責任は回避できますか?
A2. 本指針や,その細則は,あくまでも学会の自浄を目的として制定するものであり,この指針等に従ったからと言って,法的責任を問われないものではありません.また,申告内容の真偽,申告外の利益取得,申告書の保管期限経過後に発生した問題,等においても,法的責任を問われる可能性はあります.一般に言えることですが,学会の指針や規則・細則には,その上位にある「法令」の適用を回避させる効力のないことをご承知下さい.

II. 対象者に関するQ&A

Q3. 配偶者や一親等の親族,収入・財産を共有するものの利益相反状態まで報告するように定めているが,これらの人が開示・公開を拒んだら,どうしたらいいのですか?(本指針Ⅲ, IVに関連)
A3. 配偶者などの利益相反状態が,申告者の利益相反状態に強く影響するのは一般に理解されているところです.ベンチャー企業の立ち上げや運営において親族が関わる場合も実際にあります.発表者には,配偶者などの利益相反状態の開示を求めません.しかし,学会役員などには,これらを含めた開示・公開が求められます.配偶者の利益相反状態を申告していなかったことで,申告者が社会的に制裁を受けるのを避けることが目的です.申告者が自身を守るために必要なことと考え,配偶者などを説得してください.学会は配偶者などに対して,直接には何も言う立場にありません.しかし,配偶者などの利益相反状態が深刻な結果,社会的・法的問題が生じた時に,これらを自己申告されていなかった当該申告者を,学会としては,残念ながら社会の批判から守ることができません.また,学会は当該申告者を指針違反者として扱い,本指針で定められた措置をとらざるを得ません.
Q4. 対象者は,その配偶者,一親等の親族,または収入・財産を共有する者となっていますが,一親等の親族に配偶者の両親も含まれますか?(本指針Ⅲ,V関連)
A4. 親等とは親族間の世代数を数えるという概念で,親族とは6親等以内の血族,配偶者と3親等以内の姻族です.一親等以内の親族とは,親と子供で,実の親子の他,養親子,配偶者の両親,配偶者の子,子の配偶者を含みます.

III. 対象となる活動に関するQ&A

Q5. 学会発表,論文投稿,市民公開講座以外に対象となる学会の事業とはなんですか?
A5. 日本医師会や厚生労働省などへ建議を行うこと,これらからの諮問に答えること,優秀な業績の表彰を行うこと,および,診療ガイドラインの作成などです.これらは学会名で行うことですが,建議書や答申書を作成する,表彰業績の選択をする,あるいは,診療ガイドラインの作成を行うのは,理事や委員個人ですので,これらの人々の利益相反状態の開示・公開が必要となります.

IV.開示・公開すべき事項に関するQ&A

Q6. 開示と公開はどう違いますか?
A6. 本指針において,開示は学会事務局,役員,学術集会会長,評議員,委員会委員および委員長,会員,学会参加者,学会誌読者に対して行うものと定義します.公開は学会に関係しない外部の人々や,社会一般の人々に対して明らかにするものと定義します.自己申告された内容のどの範囲を開示として扱い,どこまで公開するかは,対象者および対象事業によって異なります.
学会での発表や学会誌への投稿においては,その自己申告範囲は,当該発表および論文に関連した企業・団体と発表者・投稿者との間の関係に限られます.また,申告行為自体は開示という解釈です.
学会役員などについてはより詳細な利益相反状態の自己申告が要求されます.また,学会役員などについては,一親等内の親族および収入・財産を共有する者についても利益相反状態を申告することになっております.この自己申告は学会に対して開示されるものでありますが,基本的に公開されることを宣誓した上で提出していただきます.しかし,自己申告された内容を,実際に全て公開することは,個人情報保護法の観点から許されるべきこととは考えておりません.社会的・法的に公開が求められた場合には,利益相反委員会で議論し,理事会が公開するべき範囲を決定して,これを公開することになります.
Q7. 私は本職として企業に勤務し,役員をしておりますが,申告が必要でしょうか?(本指針Ⅴ(1)に関連)
A7. 抗癌剤や医療器具を開発・販売している企業に勤められており,その中で役員・顧問職としての収入がある場合は,その報酬額を申告いただくことになります.製薬会社でも,がん治療薬や抗生物質などの外科診療に関わる薬剤を開発・販売されていない会社であれば,たとえ役員・顧問職としての収入があったとしても,申告は要りません.
Q8. 私は私立医科大学の教授であり,某製薬会社の治験調整委員という名称で報酬を得ております.しかし,企業や営利を目的とした団体の「役員」でもなく,「顧問職」という名称でもないので申告しなくて宜しいでしょうか?(本指針Ⅴ(1)に関連)
A8. 役員,顧問職という名称に限定せず,どのような名称であれ,外科診療に関連する企業や営利を目的とした団体のために活動し,これにより報酬を得ている場合は申告して下さい.
Q9. 株の保有やその他の報酬は,研究に関連した企業・団体に限らないのですか?(本指針V(2),(9)に関連)
A9. 学会発表者や論文投稿者については,当該研究に関連する企業・団体のものに限定されます.学会役員などについては,本学会が行う事業に関連する企業・団体に限定して自己申告していただくことになります.
Q10. 私はある医療器具に関する特許権を1,000万円で企業に譲渡しました.これは特許権使用料には当たらないのと解釈して,申告しなくてよいのでしょうか.(本指針V(3)に関連)
A10. 特許権の譲渡については,本指針V(3)の該当項目として申告して下さい.
Q11. 私は学会のガイドライン作成のための会議に出席したことにより,その学会から1年間で100万円をいただきました.利益相反申告書の「企業や営利を目的とした団体から,会議の出席(発表)に対し,研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当(講演料など)」に該当するとして申告しなければなりませんか?(本指針V(4)に関連)
A11. 営利を目的としていない学会や研究会からの「時間・労力に対して支払われた日当」や「原稿料」は該当せず,利益相反申告書への記載は不要です.同様に大学病院などの公的施設で講演などをされた場合も,直接に公的施設から講演料をいただいた場合は,たとえ100万円以上でも利益相反申告書に記載する必要はありません.講演場所が公的施設であっても,講演料の支払元が企業や営利を目的とした団体で,1つの企業や営利を目的とした団体から年間100万円以上であれば,利益相反申告書に記載が必要です.
Q12. 私は製薬会社のを20万円分持っています.また,先日,製薬会社の主催する研究会で講演して7万円の講演料をもらいました.これらを,全て自己申告しなければいけませんか?また,収入がある度に自己申告しなければなりませんか? (本指針V(2),(4)に関連) 
A12. 具体的な申告の時期と申告方法,限度額は対象活動や対象者により異なり,細則に定めております.申告時期については,学会発表時,論文投稿時です.学会役員などは就任時と,その後1年に1回の自己申告が必要です.株は1年間の利益が100万円以上(配当や譲渡益が100万円以上という意味です.),講演料は1企業につき年間100万円以上などの取り決めが細則に定められております.
Q13. 私は製薬会社と関連のない出版社からの原稿料が100万円を超えますが,申告が必要でしょうか?(本指針V(5)に関連)
A13. 原稿料で申告しなければならないのは,原稿料の支出元が製薬会社や医療器具メーカーなどである場合です.原稿料が出版社から支出された形であっても,実際は製薬会社などがスポンサーであるような出版物の場合は,支出元は製薬会社であると解釈されるので,申告する必要があります.
Q14. 私はA製薬からパンフレットの執筆を依頼され,原稿料として100万円をいただきました.
A製薬はこの原稿料を特定非営利活動法人「B研究会」名で,私の口座に振り込んでおります.
B研究会が「企業または営利を目的としない団体」であることから,この原稿料を利益相反申告書に記載しなくてもよろしいでしょうか?(本指針V(5)に関連)
A14. 原稿料の支払元が企業等であれば,「企業または営利を目的としない団体」を迂回して支払われる報酬も,1つの企業等から年間100万円以上であれば,利益相反申告書に記載が必要です.
Q15. ある医療器具メーカーから,私の勤める市民病院に奨学寄付金100万円の入金があり,研究担当者名は私になっています.実際には,市民病院全体の研究費として公平に使用しています.このような奨学寄付金も私の利益相反状態として開示・公開すべきでしょうか?(本指針V(6)に関連)
A15. 奨学寄付金であっても,本指針V(6)にあたると解釈して,1企業から年間100万円以上である場合は,研究担当者名である先生の利益相反状態として申告して下さい.ただし細則にあるように,学会発表,論文投稿では,奨学寄付金を納入した企業・団体と関係のない演題・論文であれば,開示対象となりません.学会役員などのより詳細な利益相反状態の開示・公開を求められる立場の方は全てが自己申告の対象となります.
Q16. 私の所属機関のとりきめでは,企業からの奨学寄付金や治験の入金額の10%を事務経費として経理が差し引きます.このため,企業から300万円の奨学寄付金をもらっても,研究者が使えるのは270万円だけです.この場合は,申告する額を270万円にしてもよろしいでしょうか?(本指針V(6),指針施行細則第一条(7)に関連)
A16. 申告者が実質的に使途を決定し得る研究費や奨学(奨励)寄附金で実際に割り当てられた額になりますので,申告額は所属機関の事務経費を控除した額を記載してください.従って,この例の場合の申告額は270万円になります.
Q17. 研究とは直接関係のない,その他の報酬」を申告するように義務づけられていますが,製薬会社が提供するテレビ番組のクイズで海外旅行が当たっても申告するのですか?(本指針V(9)に関連)
A17. クイズや抽選で当たったものは景品であって報酬ではありません.申告が義務づけられているのは「報酬」であり,「報酬」とはなんらかの労力に対する見返りとして支払われるものです.従って,景品は申告対象ではありません.本指針V(9)に当たる例としては,ある医師が特定の薬をよく処方することから,その薬を販売する企業が謝礼の意味でUSBフラッシュメモリーを医師に渡すことなどが該当します.極端な場合は贈賄行為となり刑事罰の対象であり,本指針で扱うものではありませんが,その場合も申告の義務はあります.本指針V(1)〜(8)に該当しないが,利益相反状態となる可能性のあるものを拾い上げるためにV(9)を設けております.細則に1つの企業・団体から受けた報酬が5万円以上を申告することとしております.

V.利益相反状態の回避に関するQ&A

Q18. 寄付講座の多くは企業の寄付資金によって運営されておりますが,寄付講座の教授や職員に対しても利益相反状態の回避の「全ての対象者が回避すべきこと」を適用するのですか?
A18. 寄付講座は深刻な利益相反状態が生じる危険が高いので,本指針が適応されます.
Q19. 利益相反状態の回避について「当該臨床研究を計画・実行する上で必要不可欠の人材であり,かつ当該臨床研究が国際的にも極めて重要な意義をもつような場合には,当該臨床研究の試験責任医師に就任することは可能とする.」という例外規定を設けることは,本指針の理念を弱めることになりませんか?
A19. 本指針の目指すところは,研究者に利益相反状態があることを否定することではなく,また,利益相反状態が強い研究者に対して臨床研究を抑制することでもありません.社会にとって有意義で,重要な臨床研究を行う研究者ほど,利益相反状態が強くなることも事実です.上記のような例外規定を設けることで,有能な研究者が臨床研究に関わる道を開くことが大切と考えております.米国臨床腫瘍学会(ASCO)の利益相反ポリシーにも同様の例外規定があります.一方,この例外規定に相当する研究者が試験責任医師に就任するために,第三者による審査が必要であるとの意見もあります.しかしながら,日本消化器外科学会は,学会で行われる事業について利益相反問題を管理する立場にありますが,個々の施設・研究所で行われる臨床研究を管轄することは権限の範囲を越えております.本指針では学会の管轄外で行われる問題については,学会としての判断を示すにとどめております.
Q20. 「臨床研究の試験責任者が回避すべきこと」によると特許料・特許権の獲得を回避するべき,とあります.しかし,プロトコールに含まれないが極めて有益な成果(企業の権利外の成果)が得られた場合や,医師が自主的に実施する臨床研究において知的財産権が生じた場合も,これらを放棄しなければならないのですか?
A20. 企業の権利外の成果であれ,知的財産権であれ,これらを得ることと,試験責任者の立場で公正に当該臨床研究を監督することとは両立しがたいものと理解されます.試験責任者を辞任されることで,これらの権利を放棄することは避けられます.
Q21. 私は,10病院が参加する臨床研究の中で協力する私立病院の外科部長で,この臨床研究で私の病院における責任医師になってもらいたいと言われています.しかし,私はこの臨床研究で使う薬を製造販売する会社の理事でもあり,年に500万円の報酬をもらっています.私は,この臨床研究で,私の病院の責任医師にはなってはいけませんか?
A21. 多施設臨床研究における各施設の責任医師は,本指針Ⅶには該当しないので,この外科部長が当該施設における責任医師になることを否定するものではありません.但し,当該施設の利益相反委員会や倫理委員会等が,この外科部長について,本臨床試験の責任医師となることが適当ではないと判断されるなら,その決定が優先されると,われわれは考えております.

VI. 実施方法に関するQ&A

Q22. 日本消化器外科学会でブタを使った医療機器に関する演題を発表したいのですが,今回の指針に従って,利益相反状態を開示しなければいけませんか?
A22. 今回の指針は「外科研究」の指針なので,培養細胞や動物などを用いた研究についても利益相反状態を開示していただきます.
Q23. 日本消化器外科学会以外の学会で発表するときも,同じような利益相反状態の開示が必要でしょうか?
A23. 他学会での発表での利益相反状態の開示については,それぞれの学会で定められることで,本指針が関与するところではありません.

IX. 指針改訂に関するQ&A

Q24. 以前は臨床研究のみが利益相反の開示の対象でしたが,本指針改定後は基礎研究も含まれるのでしょうか?
A24. ここ数年の間で,本邦においても欧米と同様に利益相反についての関心が急速に高まり,臨床研究のみならず基礎医学研究を遂行する上においても,利益相反をマネージメントする必要性が認識されるに至りました.このような背景において,日本医学会は「医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」(2011年)において,医学研究(生命科学研究,基礎医学研究,臨床医学研究,臨床試験)の全てが利益相反マネージメントの対象であると明記しております.また,日本製薬工業協会の「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」(2011年),ならびに,日本医療機器産業連合会の「医療機器業界における医療機関等との透明性ガイドライン」(2012年)が策定され,企業活動における医療機関および研究者個人への支払い資金の公開を行うことが表明されております.この公開対象には臨床研究のみならず基礎医学研究に対する研究費開発費や学術研究助成費が含まれます.
日本消化器外科学会は,利益相反マネージメントの対象研究を拡大しようとする最近の社会的要請に対応するため,本指針を一部改訂し,臨床研究ばかりでなく基礎研究における利益相反も含めた内容として示すこととしました.開示・公開すべき事項,および,利益相反状態の回避に若干の改訂はありますが,指針の対象者,対象となる活動,実施方法などはほとんど変わっておりません.
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